女性アスリートの無月経を考える

shallow focus photo of people playing track and field女性の健康
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先日、友人の小児科医から相談を受けました。
「摂食障害だった中学生の患者さんの無月経に対して、どうしてあげるのがベスト?陸上部で熱心に活動している女の子なんだけど」というものです。

摂食障害、無月経。
女性アスリートに多い健康問題が如実に表れている例です。

友人に答えた内容を、ここでも書いておきます。
すべての女性アスリートとその指導者やご家族にお伝えしたいことです。

女性アスリートの三主徴

アメリカスポーツ医学学会が女性アスリートに多い健康問題を「Female Athlete Triad(女性アスリートの三主徴)」と定義したのは1990年代のことです。
その3つとは、

  • 視床下部性無月経
  • 骨粗鬆症
  • 摂食障害

です。現在は、「摂食障害」は「摂食障害の有無によらない利用可能エネルギー不足」へと定義を変更されています。

利用可能なエネルギーの不足は、無月経や骨粗鬆症にとどまらず、代謝や神経、免疫系などの生理機能へも影響し、結果的にパフォーマンス低下につながりかねません。運動量に見合ったエネルギーを摂取するよう、食事や栄養には気を配りましょう。場合によっては、専門家(栄養士さんなど)の助言を受けましょう。

日本における、女性アスリートの無月経

タイミングよく、学会誌に女性アスリートの無月経に関する論文が掲載されていました。その内容をご紹介しましょう。

約4割の日本人女性アスリートに月経異常が認められる

女性アスリートの無月経などの健康問題は、トップレベルのアスリートだけの問題ではありません。
報告によると、国際大会レベルに限らず、すべての競技レベルの女性アスリートが何らかの月経異常を抱えていました。

新体操などの審美系競技の選手では16.7%、陸上競技などの持久系競技の選手では11.6%に無月経が見られました。
やせ型の体型(BMI<18.5)の選手で、無月経が多く見られています。

無月経だと疲労骨折の可能性が増える

疲労骨折は、同じ部位に小さな力が少しずつ加わることで発生する骨折です。慢性的なスポーツ障害のひとつです。16~17歳に好発し、持久系や審美系の競技の選手に多い傾向があります。

論文では、10代のアスリートでは、無月経があるとない人に比べておよそ13倍も疲労骨折になりやすいと報告されていました。
また、骨量が低かったり利用可能エネルギー不足があったりしても、疲労骨折のリスクは高くなります。

疲労骨折の原因は、筋力不足や未熟な技術、オーバートレーニングなど、多岐にわたります。そのほかに、女性アスリートでは、女性アスリートの三主徴(無月経・骨粗鬆症・利用可能エネルギー不足)もリスク因子であるということを知っておきましょう。

女性アスリートの月経を上手にコントロールする

友人は、無月経が続くと将来の妊孕性(妊娠しやすさ)に影響しないか心配していました。
確かに、アスリートが引退した後に不妊治療を受ける割合は、無月経だったグループで多いという報告があります。卵巣予備能への影響はないと思われますが、月経異常が続いていれば治療は必要になるかもしれません。

一方で、当事者である中学生は、月経があることを好ましく思っていないようでした。
月経困難症や月経前症候群など、月経に関する症状が競技のパフォーマンスやコンディションに影響することは想像に難くありません。

そこで提案したいのは、ピルなどのホルモン剤を用いた月経コントロールです。
ロンドン2012オリンピックに出場した女性アスリート156人のうち7%、リオ2016オリンピックに出場した164人の女性アスリートのうち27.4%が、ホルモン剤による継続的な月経対策を行っていると回答しています。

アスリートを対象にした調査結果によると、ホルモン剤の服用が、有酸素性能力や無酸素パワーなどのコンディションに与える影響はないようです。
月経に伴う症状によるパフォーマンス低下がなくなると考えれば、検討する価値はありそうです。

まずは、エネルギー不足を解消しましょう。体重を戻しましょう。
それでも月経が再開しない場合には、骨量低下予防のためにもホルモン剤による治療を行いましょう。治療に際しては、ご本人や家族がそのメリットを理解していることが大切です。
どんなホルモン剤を用いるかを含め、産婦人科医に相談してください。上手にコントロールすれば、月経に伴う症状も改善できます。

友人や家族の支えもあって、摂食障害を克服できた中学生。
陸上を続けるためにも、月経のことも前向きにとらえられるようになってほしいなぁと願っています。

参考文献

女性スポーツ医学から予防医学へ.能勢さやか.日本産科婦人科学会雑誌.2020;72(9):1102-1116.

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