おうちで妊活:男性版~~「精子力」をアップする生活を~~
不妊治療はお子さんを望むカップルがお二人で受けるものですが、どうしても女性に負担がかかりがちです。
今回ご紹介する、男性が取り組める日常生活を送るうえでの工夫を参考に、お二人でご一緒に、仲よく妊活に取り組んでいただきたいと思います。
男性不妊の原因と検査、治療
妊娠を希望するカップルのうちおよそ10-15%が1年以内に妊娠せず、不妊症と診断されます。
そのうち、男性が原因であることは半数弱です。
決して、少なくはありません。
男性不妊には、どんな原因があるか
- 造精障害(精子が形成されにくい状態のこと)
- 特発性(原因不明)
- 視床下部、下垂体障害(男性ホルモン分泌をつかさどる中枢の異常)
- 精索静脈瘤(精巣に分布する静脈の流れが悪い状態)
- 停留精巣(精巣が陰嚢内に下りていない状態)
- 染色体異常
- 薬剤性
- 精路通過障害(精子の通り道が狭かったり詰まったりしていること)
- 副性器機能異常(精巣上体や前立腺の炎症など)
- 性機能障害(性交障害や射精障害など)
専門的な検査を受けても原因が特定できない、特発性の造精障害が全体の半数程度を占めています。
男性は、どんな検査を受けるのか
- 問診
- 診察
- 精液検査
- 血液検査(ホルモン値など)
- 尿検査
- 超音波検査(精索静脈瘤・精巣腫瘍の有無などを調べる)
産婦人科における診療でも精液検査や血液検査は実施しますが、それ以外の専門的な検査まで受ける場合は泌尿器科医による診療が必要です。
産婦人科の検査で異常を指摘された場合には、担当医とも相談して泌尿器科の受診を考えましょう。
男性は、どんな治療を受けるのか
- 内科的な治療
- ホルモン剤による治療
- ビタミン剤、抗酸化物質
- 漢方薬
- 外科的な治療
- 精巣静脈瘤の手術
- 精路の再建
- 精巣内精子回収法(TESE)
- その他(性機能障害に対するカウンセリングなど)
妊娠につなげるためにカップルで受ける治療としては、人工授精や体外受精、顕微授精があります。
内科的な治療のうち、ビタミン剤や抗酸化物質、漢方薬は、主に特発性の造精障害に対して行われます。
これらの治療は、現時点でエビデンスが十分だとは言えず、保険適応がないものもあります。
ライフスタイルの工夫で、「精子力」をアップさせよう
ところで、一般的に行われる精液検査で精子の濃度や運動率に問題がない場合、男性ができることはないのでしょうか。
それは、違います。
体外受精などの生殖補助医療が広がり、一般精液検査では分からない精子機能が妊娠率に影響を与えていると報告されるようになりました。
精液の酸化ストレスや精子DNAの断片化など、従来の検査だけでは分からない要素が精子の機能を左右しているようです。
日ごろの生活習慣が、これらの精子機能に影響を与えることがわかってきました。
生活習慣は、変えることができます。
生活習慣を改善して、「精子力」をアップさせましょう。
これらの工夫は、特発性の造精機能障害も改善してくれる可能性があります。
したがって、すべての妊活カップルにおススメです。
ストレスを減らす
ストレスを抱えた人は少なくありません。
不妊治療そのものもストレスの原因となります。
ストレスはゴナドトロピンに影響を与え、その結果男性ホルモンの分泌を減らす可能性があります。
実際、ストレス度が高いと精液所見や受精率が低下するという報告があります。
上手にストレスをコントロールしましょう。
抗酸化物質を取り入れる
抗酸化物質を服用していると妊娠率がわずかながら上昇するという報告があります。(参考文献:男性不妊症に対する抗酸化物質)
しかしながら、エビデンスの質も高くなく、どの抗酸化物質がよいのかを特定するには至っていません。
サプリメントで摂取しないまでも、毎日の食事で抗酸化物質を摂ることは心がけるようにしたいものです。
食事内容に気を付ける
高脂肪食は、精子機能に悪影響をもたらす可能性があります。
赤身肉や加工肉、飽和脂肪酸の過剰摂取もお勧めできません。
一方、積極的に摂りたいのが、野菜と果物、豆類、そして魚です。
これらは抗酸化物質や不飽和脂肪酸(ω-3脂肪酸など)の供給源となります。
エナジードリンクなどに含まれるカフェインも、精子機能に影響を与える可能性がありますが、はっきりしたことはわかっていません。
適度な運動をする
適度な運動は誰もが取り入れてほしい習慣ですが、男性不妊に対しても有効です。
ただ、負荷が強い運動、特に長時間の自転車競技は、精子機能を低下させてしまうかもしれないので注意しましょう。
高温環境を避ける
精巣の温度が高くなると、精子機能が低下します。
明らかなエビデンスがあるわけではありませんが、ゆったりとした下着やパンツを選ぶようにしましょう。
また、長時間のドライブ、膝の上でのパソコン作業も精巣温度を上昇させるので注意が必要です。
サウナやジャグジー、入浴などの影響ははっきりしていませんが、過度の利用は控えておきましょう。
適切な体重をキープする
肥満ややせ過ぎだと精液所見がよくありません。
適度な運動や食生活を見直し、適切な体重をキープするようにしましょう。
健康に過ごすためにも大切なポイントです。
禁煙しよう
タバコの成分には活性酸素がたくさん含まれます。
精子機能を低下させる酸化ストレスを軽減させるためにも、また他の病気を予防するためにも、タバコはやめましょう。
これらの生活習慣は、いずれも酸化ストレスの軽減を図るものです。
酸化ストレスは、精子だけでなく卵子にも悪影響をもたらします。
男性だけではなく、お二人で一緒に取り組んでくださいね。
バランスのとれた食事で、抗酸化物質をしっかり摂ろう
抗酸化物質として知られているものとして、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEのほか、亜鉛、L-カルニチン、L-システイン、ペントキシフィリン、コエンザイムQ10などがあります。
このうち、ビタミン類と亜鉛については、食事摂取基準で推奨摂取量が定められています。これらの栄養素は、バランスのとれた食事を摂っていれば必要な量をおおむね摂取することができます。
「バランスのとれた食事」については、農林水産省などが発表している「食事バランスガイド」を参考にしてみましょう。
実践が難しい、と思われた方はサプリメントを活用してもいいでしょう。