基礎体温で排卵日は予測できる?―基礎体温をつけるときに知っておきたいこと―

基礎体温、測っていますか。記録をつけていて、気になることはありませんか。
今日は、基礎体温に関してよく聞かれる質問についてお答えします。

基礎体温とは

基礎体温とは、安静時の体温を意味します。通常、起床してすぐの口腔内の体温を測ります。婦人体温計とよばれる、目盛りの細かい体温計で測定しましょう。

基礎体温を経時的に測定すると、排卵前(卵胞期)の低温相と排卵後(黄体期)の高温相に分かれます。低温相と高温相の温度差は0.4℃くらいです。
排卵後に黄体が放出する黄体ホルモン(プロゲステロン)によって体温が上昇するため、女性の基礎体温は低温相と高温相がある二相性になります。

基礎体温で排卵がわかりますか

基礎体温から排卵日を推定する方法としては、いくつかの説があります。

  • 基礎体温が急に下がる日を排卵日とする(体温陥落日)
  • 体温が最低値をとった日を排卵日とする(最低体温日)
  • 低温相の最終日を排卵日とする(低温最終日)
  • 高温相になった初日を排卵日とする(高温相初日)

どの説が一番妥当なのでしょうか。

体温陥落日を気にする方が一定数いらっしゃって、「体温が下がった日が分からないけど大丈夫ですか」と聞かれることがあります。体温陥落日がグラフ上認められなくても、まったく問題ありません。ある報告では、体温陥落日が認められるのは28.4%しかなかったそうです。

超音波検査との相関で見ると、高温相初日は他の方法と比べて一致率が低く、26.8%しかありません。

一方、超音波検査との相関が最も高かったのは、低温最終日です(62.5%の一致率)。
低温最終日は、体温が高温相になって初めて「昨日が低温最終日だった」と判断できます。事前に「今日が最終日」と予測できるものではありません。

したがって、基礎体温で事前に排卵日を予測することは困難です。
基礎体温は、後から見て排卵があったかどうかを推定するのには役立ちます。推定の際は、以下のポイントを押さえておきましょう。

  • 0.3℃以上の体温上昇が一定期間続けば、排卵したと推定できる
  • 高温相が7日以内の場合は、無排卵周期の場合がある(排卵していない可能性)
  • 二相性になっていても、卵胞が破裂できていないことがありえる(排卵していない可能性)

基礎体温表で気になるアレコレ

基礎体温が低いと妊娠しませんか

高温相の体温は通常36.7℃前後とされています。基礎体温表によっては、36.7℃のラインが引かれているものもあります。

しかし、すべての人が高温相で36.7℃を超えるというわけではありません。
基礎体温は、黄体ホルモンがあると体温が上昇するという体の仕組みを利用して排卵の有無をチェックするものです。この変化(二相性であること)が重要であり、数値はあまり気にしないでください

基礎体温がガタガタです

ガタガタと言われる場合、以下のどれかに該当します。

  • 生理的な範囲での体温のばらつきがある
  • 高温相が短くてはっきりしない(黄体機能不全の可能性)
  • 二相性になっていない(排卵していない可能性)

アプリで記録している方は、スマートフォンの小さな画面で見ることが多いと思います。適宜拡大して確認しましょう。小さい画面では、生理的なばらつきと二相性の変化の区別がつきにくくなります。

低温相の平均と高温相の平均の差が0.3℃ありますか。
高温相は10日前後ありますか。
低温相も高温相もその平均値から少しばらつきがあっても構いません。一日だけ極端に高い・低いといった外れ値も無視しましょう。

大きなグラフにしてもこれらのポイントがはっきりしなければ、一度産婦人科を受診してみましょう。診察では、基礎体温表の確認とともに、実際に超音波検査も用いて排卵できているかどうかチェックします。

夜勤があるので、測定時間がバラバラです

基礎体温は朝起きたとき、お布団から出る前に測定するのが基本です。
ただ、お仕事などの都合で夜間眠れていない場合には、数時間眠った後に起きたタイミングで代用してかまいません。念のために、測定時間も記録しておくと良いでしょう。

低温相と高温相は平均値を見て判断すればよいので、たとえ時間がずれたことで体温が少々高くなっていたとしても大きな支障はありません。

測定時間以外にも、基礎体温に影響を及ぼすものがたくさんあります。
風邪気味だった、よく眠れなかった、などの体調や気になったこともメモしておきましょう。

基礎体温に振り回されない

基礎体温は、産婦人科を受診しなくて排卵できているかを推定するのに役立つ方法です。
ただ、毎月の排卵日の予測に用いるのには限界があります。

体温だけにこだわらないこともポイントです。
体調の変化をチェックしたり、それらを記録したりするためにも、基礎体温表やアプリを活用しましょう。
月経前症候群(PMS)かどうかの判断や自分自身の体調管理に役立ちます。

基礎体温は、妊活にとっても数あるツールの中の一つに過ぎません。
基礎体温を測定することが負担になった場合には、お休みしましょう。毎日をHAPPYに過ごせることの方が大切です。

《参考文献》
今すぐ知りたい!不妊治療Q&A:久慈直昭、京野廣一編集(医学書院)