妊娠中は、お寿司を食べてはいけないの?
12月の診療中に、何回か受けた質問です。
年末年始には、お寿司を食べる機会がいつもより増えるからでしょうか。
さっそくですが、この質問に対する私の答えは、
お寿司を食べても大丈夫!
です。
ただし、以下の解説もお読みになって、食べ方には気をつけてくださいね。
マグロ・キンメダイは食べ過ぎ注意!
お寿司の定番と言えば、マグロでしょうか。
おいしいマグロではありますが、食べ過ぎには注意が必要です。
それは、食べ過ぎることによって、マグロに含まれる水銀が取りこまれ、お腹の中の赤ちゃんに影響を与える可能性があるからです。
ここで言う「食べ過ぎ」とは、どの程度をさすのでしょうか。
クロマグロ(本マグロ)やメバチマグロは、週に80g程度(およそ1人前)までなら食べても影響がないと考えられています。
つまり、毎日マグロのお刺身を一皿、というような極端な食事をしない限り、食べ過ぎにはなりません。
他に注意が必要な魚には、キダイ・マカジキ・クロムツ・キンメダイなどがあります。また、イルカやクジラも同様に注意が必要です。
これらの魚は、食物連鎖によって水銀の濃度が他の小さな魚よりも高くなっているからです。
これらの魚の摂取目安を示します。この範囲内であれば、お好きな調理法でどうぞ。
マグロやキンメダイ:1週間に80g(およそ1人前)までOK
キダイ・マカジキ・クロムツ:1週間に160g(およそ1人前を2回)までOK
イルカ・クジラ:定期的に食べないようにする
私たちがこれらの魚を食べている際には、とり込んだ水銀が自然に体外に排出されているため問題となりません。しかし、赤ちゃんはとり込んだ水銀を体の外に出すことができません。そのため、妊娠中はマグロなどの水銀を多く含む魚を食べ過ぎないようにする必要があるのです。
一方、他の比較的小さな魚を食べる分には、通常の量で差支えはありません。魚は、良質なたんぱく質源であり、DHAやEPA、妊娠中に不足しがちなカルシウムの摂取源として重要な食材です。
むしろ控え過ぎないように気をつけてください。
厚生労働省のHPでは、注意が必要な魚の種類や1週間に食べられる量の目安が記載されたパンフレットも入手できます。ご参考になさってください。
注意すべき生ものは、チーズ・肉・野菜
お寿司よりも注意を要する生ものがあります。
それらについて確認しておきましょう。
フレッシュチーズは控えよう
妊娠中にかかると重症化しやすい食中毒菌として、リステリア菌があります。
リステリア感染症を予防するために、リステリア菌が見つかることがあるフレッシュチーズ、生ハムなどは控えた方がよいでしょう。
詳しくは、以下の記事をお読みください。
《おススメ記事》
妊娠中に注意が必要な食中毒は?
お肉はしっかり加熱しよう
妊娠中に感染することで赤ちゃんに影響を与える病原体のうち、トキソプラズマは食事によって感染する寄生虫です。
トキソプラズマは、家畜の肉や猫の糞、土の中にいる原虫です。
猫のトイレ(糞)の掃除をしていて感染する可能性があります。お掃除は他の人に頼むか、手袋をして掃除後にしっかり手を洗うことで予防しましょう。
また、肉の中にいるトキソプラズマは加熱することで感染を防ぐことができます。しっかり加熱して食べるようにしてください。
野菜はしっかり洗おう
トキソプラズマの感染経路として、ガーデニングなどの土いじりも報告されています。
トキソプラズマが土の中にいるからと考えられます。
家庭菜園などで収穫した生野菜を食べる時には、土を落としてしっかり洗うようにしましょう。
また、ガーデニングや子どもと砂遊びをした後には、しっかり手を洗うことを心がけてください。
ヨウ素とビタミンAは、ほどほどに
人間の体にとって必要な栄養素であっても、その摂り過ぎが問題となるものがあります。妊娠中に特に注意が必要なものは、ヨウ素とビタミンAです。
適量のヨウ素が、甲状腺機能を維持する
ヨウ素は、毎日130μg程度の摂取が推奨されている栄養素です。ヨウ素は甲状腺機能の維持に重要です。不足すると、甲状腺機能が低下します。
ただし、耐容上限量も設定されており、その値は成人女性では日に3000μg(=3mg)となっています。ヨウ素を摂り過ぎると、甲状腺が上手にヨウ素を使えなくなってしまうからです。
日本人は、海藻類をよく食べるため、ヨウ素の摂取量が比較的多いことが知られています。
ヨウ素の平均摂取量は、昆布製品を多く含まない献立であれば日に500μg程度、昆布などの海藻食品をたくさん摂ると1~3mgの範囲であろうと推定されています。
さて、妊娠中は、どのくらいのヨウ素を摂取すればいいのでしょうか。
1日の摂取推奨量:240μg(妊娠中の付加量が110μg)
1日の耐容上限量:2000μg
お正月に昆布巻きを食べたとしても、その日は上限を上回るかもしれませんが、1~2週間単位で平均して上限量を超えていなければ大丈夫です。
ただし、たとえば昆布チップスを毎日食べる、といった極端な食習慣はやめておきましょう。
うなぎとレバーは、毎日食べない
ビタミンAも、食品から摂取する必要がある大切な栄養素ですが、摂り過ぎはよくありません。
特に、ビタミンAの過剰摂取により、先天奇形が増えるという報告があるため、妊娠中の過剰摂取は避けたいものです。
なお、ビタミンAとして体内で働く物質には、主に植物から摂取するβ-カロテンがあります。β-カロテンは、ビタミンAが体内で不足したときにビタミンAに変換されるという物質です。このβ-カロテンの過剰摂取による先天奇形などの過剰障害は知られていません。
したがって、ビタミンAが直接摂取できるものの摂り過ぎに注意すれば十分です。
具体的な摂取推奨量と上限量は次のとおりです。
1日の摂取推奨量:650~700μgRAE(妊娠後期のみ、+80μgRAE)
1日の耐容上限量:2700μgRAE
注:推奨量はβ‐カロテンなども含んでレチノール活性当量として算出されているが、耐容上限量はビタミンA(レチノールなどのレチノイド)のみが対象である。
したがって、注意すべきはレチノールを多く含む食品やサプリメントということになります。
ビタミンAを含むサプリメントを規定量以上に摂取する
うなぎやレバーを毎日のように食べる
レバーは鉄分を多く含みます。そのため、貧血予防のためにレバーを積極的に食べている方がいらっしゃるかもしれません。
その場合、ビタミンAが過剰にならないように、多くても1週間に1回程度にしておきましょう。鉄分は、緑黄色野菜などの他の食材でも補えます。
いつだって、食中毒に気をつけよう
妊娠している・いないに関わらず、食事の際には食中毒に注意をしましょう。
冬に美味しい牡蠣などの貝は、ノロウイルス感染症の原因となることがあります。
夏は、サルモネラ菌による食中毒が増えます。生卵などに注意が必要です。
- 調理・食事の際は手をしっかり洗う
- 新鮮な食材を使い、適切に保存する
- 調理器具や調理スペースを清潔に保つ
- しっかり加熱するなど、調理方法に気を配る
- 調理したものは早めに食べる
など、食中毒予防に心がけましょう。
これらの注意をしていれば、妊娠中でもお寿司を食べることは可能です。
妊娠しているからと言って、過剰な我慢は要りません。おいしく、召し上がってくださいね。