いつ、産婦人科・泌尿器科を受診したらいいの?

妊活を始めたら、できるだけ早く赤ちゃんが欲しいですよね。
実際は、どのくらいの期間で妊娠できるのでしょうか。

妊娠するタイミングは、月経周期につき1回しかありません。
Zinamanらが報告したデータによると、健康な女性(平均年齢:30.6歳)における月経周期あたりの妊娠率は、2周期目までは約30%と高いのに対し、3周期目以降は下がっていきます。すなわち、約半数のカップルは妊活を始めてから2周期目までに妊娠が成立し、1年を過ぎると妊娠成立の可能性が少なくなるということです。

このような知見を踏まえ、不妊症の定義は、「生殖年齢の男女が、1年間、避妊することなく通常の性交を継続的に行っているにも関わらず妊娠しないもの」とされています。

1年という期間が示す意味

はじめに、この1年間という期間の持つ意味を確認しておきましょう。

不妊症とは、妊娠するために何らかの治療を必要とする状態のことであり、本来は期間に依存するものではありません。
しかし、今後妊娠するかどうかを判別するのは非常に困難です。検査を行っても原因がわからないことが多いからです。
そのため、1年経った時点で妊娠していないカップルは、その後自然に妊娠しない確率が高いだろう、という推測のもと、不妊症の検査や治療を考慮する目安として、1年という期間が設けられているのです。
あくまでも目安の期間であると考えましょう。

受診が早過ぎれば、本来なら必要なかった治療を受けてしまうリスクが高くなります。受診が遅くなれば、妊娠する前に妊孕性が失われるリスクが高くなります。
そのバランスには当然、個人差があります。

ただ、1年間も待たない方がよいと言える場合があります。
そこで今回は、早めに産婦人科(泌尿器科)を受診した方がよいかどうかを判断するチェックポイントをご紹介しましょう。

女性は、どんな場合に早めに受診した方がよいの?

35歳以上である

妊孕性(妊娠のしやすさ)は30代後半からぐっと下がり始めます。35歳以上の場合、半年間を目安に受診を考えてみましょう。

特に40歳以上であれば、先に検査だけ受けてみるという選択肢もおススメです。

無月経、月経不順である

月経周期が整っていない方は、排卵のリズムが整っていなかったり排卵していない可能性があります。排卵しないと妊娠できないので、排卵するための治療を受けましょう。

卵巣や卵管の手術、がんの治療を受けたことがある

卵巣は、一部でも残っていれば妊娠は可能です。ただ、残っている卵巣の割合によっては、治療を急いだ方がよいことがあります。
卵管は、片方でも残っていれば妊娠は可能です。ただ、残っている卵管が通っているかどうかは、確認が必要です。

以前は、がんの治療をするときに、今ほど妊孕性(妊娠のしやすさ)への影響に関する説明はあまりされてきませんでした。しかし、抗がん剤や放射線の治療では、妊孕性に影響を与えることがあります。

今までに受けた治療が妊娠に影響するのかどうか、分からなかったり不安を抱えていたりする場合は、影響の有無などを確認し相談しておくと良いでしょう。

男性は、どんな場合に早めに受診した方がよいの?

勃起障害(ED)や射精障害がある

まず、泌尿器科を受診しましょう。
治療が困難(=自然妊娠が困難)な場合には、人工授精などの治療が必要になります。その場合は、不妊治療を行っている施設をカップルで受診しましょう。

精巣炎の既往やがんの治療を受けたことがある

ムンプス(おたふくかぜ)による精巣炎などでは、造精機能が低下することがあります。造精機能とは、精子を作る能力のことです。

また、がんの治療で用いられた薬剤や放射線にも、造精機能に影響を与えるものがあります。

これらの影響の有無は、精液検査で分かります。不安がある場合には、受診して検査を受けましょう。
精液検査は、不妊治療を行っている産婦人科でも受けることができます。

受診は、いつでもウェルカムです

チェックポイントに該当したら、受診するかどうか検討してください。パートナーと相談することをお勧めします。
該当するチェック項目がなかったら?自然に妊娠するのを待ってみましょう。そして、1年ほど経ってから、受診するかどうかを検討する機会を持ってください。

不妊治療に携わる医療従事者は、どのタイミングで受診なさっても、「妊娠したい」というあなたに寄り添う伴走者です。

参考文献
生殖医療ポケットマニュアル:吉村泰典監修(医学書院)