排卵誘発はした方がいいの?
排卵誘発とは、卵胞の発育を促すための治療です。
月経不順や無月経の人は排卵がうまくいっていない可能性があり、妊娠するためには排卵誘発が必要となることがあります。
排卵誘発はなぜするのか?
一般治療の場合
排卵していない人が妊娠するためには、排卵をおこして卵子と精子に出会ってもらう必要があります。
排卵誘発剤とよばれる薬を使いながら、卵胞の発育を超音波検査で確認し排卵する時期を推測していきます。
月経周期が不規則でいつ排卵するのか予測が難しい場合も、排卵誘発剤を使用することがあります。
月経周期が長くなると、たとえば1年間に排卵する卵子の数が減るため、妊娠する可能性が減ってしまいます。また、排卵の時期がなかなか読めないと、タイミングをとるのも難しくなります。
排卵誘発剤を使いながら、より規則的で正常範囲の月経周期になることを目指します。
また、自然に排卵している場合でも、複数の排卵を促して妊娠率の向上を期待することもあります。
排卵する卵子の数が増えるため、多胎になる可能性も増えます。また、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)という合併症になることもあります。
ご自身の状況に合わせ、主治医と相談して排卵誘発するかどうか決めていきましょう。
生殖補助医療の場合
体外受精などの生殖補助医療では、治療の効率性を高めるために調節卵巣刺激を行います。1回の採卵でなるべく多くの卵子を採取し、採卵の負担を少なくしつつ生産率(赤ちゃんが生まれる可能性)を高めることが目的です。
一般治療の場合と異なり、受精卵を凍結保存するという選択肢をとることができます。そのため、たくさんの卵子が育っても多胎になるリスクはコントロールが可能です。
したがって、上記の目的を果たすために、一般治療より多くの排卵誘発剤を使用してなるべくたくさんの卵胞を育てて採卵する数が多くなることを目指します。
実際には、排卵誘発剤に対する反応度などから、どのような方法で卵巣を刺激するか決定されます。主治医と相談して、一番いいと思われる方法を選んでいきましょう。
質問された方の場合…過排卵を目指すかどうか
先日、外来で「私は排卵誘発した方がいいのでしょうか?」と聞かれた方は、2人め不妊の方でした。もうすぐ40歳、タイミング療法で妊娠せず、人工授精も何回か実施されていました。
自然に排卵はあります。精液所見にも問題がなく、不妊症の原因は特に指摘されていません。
人工授精の妊娠率については、卵胞をたくさん育てて複数の卵子を排卵させる「過排卵」を起こした方が妊娠率が高いというデータがあります。
このデータをもとに考えれば、排卵誘発する意義はありそうです。
ただし、複数の卵子が育っている場合、すべての卵子が受精し着床すると多胎になるわけです。
そのリスクを認識しておく必要があります。
実際には、多胎になる可能性が高い状況では、それを回避するのが一般的です。
たとえば3~4個以上の卵胞が発育した場合、タイミングをとったり人工授精を中止したりします。
40歳以降になると、どうしても卵子の老化により妊娠率が下がります。
複数の卵子が排卵しても、結果として妊娠する可能性は高くありません。
1~2個の卵胞が育つように調節できるとすれば、一般治療における過排卵も一つの選択肢と言えるでしょう。
過排卵を目指す場合には、多胎やOHSSのリスクの説明も受けたうえで排卵誘発剤を使用するようにしましょう。