母子感染を防ぐための感染予防対策5か条
妊娠中、赤ちゃんに影響をおよぼす可能性がある病気にはかかりたくないですよね。今回は、感染することで赤ちゃんに病気を起こすかもしれない感染症にかからないための対策をご紹介します。
2020年12月3日現在、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)によって、赤ちゃんの異常、流産、死産のリスクが、特に高くなるという報告はありません。ただ、外国では妊娠によって重症化するリスクや母子感染が報告されています。
これからご紹介する感染予防対策は、新型コロナウイルスにも有効です。しっかり実践していきましょう。
ワクチンで予防する(妊娠中はご家族が、産後はあなた自身が)
ワクチンで予防できる感染症は?
今年は流行が抑えられている風疹は、妊娠中に感染すると赤ちゃんに先天性風疹症候群を起こすことがあります。風疹はワクチンで予防ができますが、妊娠中には風疹ワクチンを接種することができません。
どんな場合にワクチンを接種した方がよい?
妊娠初期に行う血液検査で、風疹に対する抗体を持っているかどうか調べているはずです。検査結果を確認して、抗体をしっかり持っているか確認しましょう。
HI法では16倍以下、EIA法では8IU/ml未満だと、抗体の値が低いと判断します。
風疹に対する抗体が低い場合は、同居するご家族にワクチン(麻疹風疹混合ワクチン:MRワクチン)を接種してもらいましょう。ご家族が風疹を家庭内に持ち込むことを防ぎます。
また、産後にあなた自身もワクチンを接種しましょう。次のお子さんを妊娠するときまでに風疹に対する抗体を持っておくためです。
風疹に対する抗体の検査やワクチンの接種は、公費で受けられる場合があります。
ご家族やご自分が該当しているか、お住まいの自治体に問い合わせると良いでしょう。
手をよく洗う
手洗いで予防できる感染症は?
トキソプラズマは、妊娠中に感染すると赤ちゃんに先天性トキソプラズマ症を起こすことがあります。トキソプラズマは猫のフンや土の中にいる寄生虫で、ヒト以外の動物にも感染します。
ガーデニングをするとき、動物(猫など)の糞を処理する時などは、使い捨て手袋を着けましょう。また、終わったら、石けんを使って丁寧に手を洗いましょう。
手洗いは感染予防に重要です。
トキソプラズマ以外の微生物でも、接触感染を起こしうる感染症すべてに効果があります。
こまめに手洗いをするようにしましょう。特に、食事や調理をする前にしっかり洗いましょう。
体液には直接触れない
体液(尿・唾液・精液・血液など)で感染する感染症は?
サイトメガロウイルスは、小さいお子さんの間で感染が広がりやすい微生物です。妊娠中に感染すると、赤ちゃんに先天性サイトメガロウイルス感染症が起こることがあります。
あなたのお子さんのおむつでも使い捨ての手袋を着けて処理するか、おむつを交換した後に石けんを使って丁寧に手を洗いましょう。唾液にも含まれるので、食べ物の口移しは止めましょう。
B型肝炎や梅毒は精液や血液を介して感染します。
歯ブラシなど血液がつく可能性があるものは、自分専用のものを使いましょう。妊娠中の性生活ではコンドームを着用し、オーラルセックスは避けましょう。
しっかり加熱して食べる
生の食材で感染する感染症は?
トキソプラズマは、豚肉などにも寄生していることがあります。生肉(火を十分に通していない肉)、生ハム、サラミなどは、妊娠中は食べないようにしましょう。また、生野菜は土が残らないように、しっかり洗いましょう。
加熱していないチーズには、リステリア菌という食中毒の原因になる菌が含まれていることがあります。妊娠中は、リステリア症になりやすいという報告があるので、加熱していないチーズ(フレッシュチーズ)は避けておきましょう。
人ごみは避ける
人ごみの中で感染する感染症は?
風疹、インフルエンザなどの飛沫で感染する病気は、人ごみの中で感染する可能性があります。
なるべく人ごみは避け、外出時にはマスクを着用しましょう。
新型コロナウイルスも飛沫で感染します。「三密」を避けるように言われているのは、そのためです。
人ごみに出るときに気をつけることは?
人ごみを完全に避けて生活するのは困難です。
外出するときは、以下の点に注意しておけば、感染のリスクを下げることができます。
- 人との距離をなるべく保つ
- マスクを適切につける
- 不特定多数の人が触るものには、なるべく触らない
- 外出中は、自分の首から上に触らない
- こまめに手洗いや手指消毒を行う
- 帰宅したら、石けんを使ってしっかり手を洗う
妊娠中に気をつけたいことの多くが、妊娠していなくても普段から心がけておきたいことです。
妊娠しているからと言ってあまり神経質にならず、快適な毎日を過ごしてください。
《参考文献》
赤ちゃんとお母さんの感染予防対策5ヶ条 (2013 年 5 月 29 日改訂):日本周産期・新生児医学会、日本小児科学会、日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会