閉経:生理がない

女性のための薬膳

中医学の「閉経」とは、16歳になっても月経が始まらない、あるいは、以前はあった月経が何らかの病的な理由で6か月以上止まることを意味します。前者を「原発性閉経」、後者を「継発性閉経」と言います。

Nobuko
Nobuko

「閉経」とありますが、日本語の閉経とは意味が異なります。西洋医学で言うところの無月経をさします。西洋医学の定義では、18歳になっても月経が始まらない場合には原発性無月経、以前はあった月経が3か月以上ない場合には続発性無月経と診断します。

原発性無月経の場合、15歳ごろには一度産婦人科を受診して検査を受けることをお勧めします。もし、他の第二次性徴(乳房のふくらみや陰毛など)も認めない場合には、12歳ごろには受診をご検討ください。
続発性無月経の場合も、放置せずに受診しましょう。無月経の期間が長いと、治療にも時間がかかるようになります。また、無月経が続くことでエストロゲン(女性ホルモン)が減少し、骨の強さなどに影響を与えることもあります。

閉経の弁証

中医学では、「閉経」の原因となる病態(証)を以下のように考えます。どの状態が判断して(弁証)、それに合った治療(論治)を行います。
ここでは、無月経の原因や治療は西洋医学的な治療を優先するとして、治療を受けるのに適した身体づくりを目的とした弁証論治をご紹介します。

薬膳のレシピも、食べる人の証に合ったものを考えるようにします。
具体的なレシピは、はっぴぃ薬膳のインスタグラムでご紹介しています。

肝腎不足

16歳になっても月経が始まらない。初経が始まる年齢が遅い。「月経後期」や「月経過少」に引き続いて、月経が止まる。
身体が虚弱、足腰が弱い。めまいがある。

薬膳的おススメ食材

肝・腎を養う食材や気血を補う食材を摂りましょう。

  • うなぎ
  • いか
  • 黒ごま
  • にんじん
  • クコの実

用いられる方剤・漢方薬

用いられる方剤には、帰腎丸があります。

漢方薬では、「頭がぼーっとする」「めまい感」「口渇」などの症状をもとに、六味丸が処方されます。

気血虚弱

月経が遅れがちで量が少なかった後に、月経が止まる。
めまい、動悸。精神的に疲れやすい。食欲がない。髪の毛につやがない。

薬膳的おススメ食材

気血を補う食材や気を補う食材を摂りましょう。

  • うるち米
  • とり肉
  • たこ
  • やま芋
  • ぶどう

用いられる方剤・漢方薬

用いられる方剤には、人参養栄湯があります。

人参養栄湯については、インスタグラムでピックアップして解説する予定です。

陰虚血燥

「月経過少」に引き続き、月経が止まる。
イライラする。顔が赤く、寝汗をかく。空咳が出る。

薬膳的おススメ食材

陰を補う食材や熱をさます食材を摂りましょう。

  • 牡蠣
  • アスパラガス
  • トマト
  • りんご

用いられる方剤・漢方薬

用いられる方剤には、加減一陰煎があります。

漢方薬では、「イライラ」や「口の渇き」を伴う生殖器系のトラブルに清心蓮子飲を処方します。

気滞血瘀

月経が6か月以上止まっている。
わき腹が張って痛む。乳房のはりがあって痛い。イライラして怒りっぽくなる。舌が暗紫色。

薬膳的おススメ食材

気血をめぐらせる食材を摂りましょう。

  • そば
  • 玉ねぎ
  • ちんげん菜
  • みかん
  • ターメリック

用いられる方剤・漢方薬

用いられる方剤には、膈下逐瘀湯があります。

気血をめぐらせるものとして、女神散という漢方薬があります。
「めがみ」ではなく、「にょしんさん」と読みます。

寒凝血瘀

冷えに伴って、月経が止まる。
腹部が痛むが、温めると良くなる。四肢が冷たい。

薬膳的おススメ食材

身体を温める食材や血をめぐらせる食材を摂りましょう。

  • もち米
  • 羊肉
  • ピーマン
  • 唐辛子
  • くるみ

用いられる方剤・漢方薬

用いられる方剤には、少腹逐瘀湯があります。

冷えや気血の滞りによる症状を緩和するものとして、五積散という漢方薬があります。

痰湿阻滞

「月経後期」に引き続いて、月経が止まる。
むくみ。胸がつかえる。めまい。嘔気、痰が出る。倦怠感。おりものが多い。

薬膳的おススメ食材

湿をとる食材を摂りましょう。

  • はと麦
  • ふぐ
  • 菊芋
  • 黒豆
  • すもも

用いられる方剤・漢方薬

用いられる方剤には、蒼附導痰丸合仏手散があります。

漢方薬では、「上腹部のつかえ」「吐き気」などをもとに、茯苓飲などが処方されます。

閉経のためのセルフケア

証に合わせた薬膳とともに、日常生活にも気を配ることでセルフケアを行いましょう。

月経トラブルの治療はお早めに

過少月経(月経の量が少ない)や希発月経(月経の間隔が空いている)などの月経異常があれば、早めに治療を受けておきましょう。
放置すると、無月経につながることがあります。

月経期に身体を冷やさない

月経期には、体を適度に動かし、しっかり食事を摂って、身体が冷えないようにしましょう。
冷たいものの食べ過ぎや飲み過ぎに注意し、雨などに打たれないように注意しましょう。

ストレスをためない

気持ちを穏やかに持ち、ストレスをためないようにしましょう。
適度に体を動かすことは、ストレス解消につながります。疲れた時は、よく眠るようにしましょう。

ダイエットはほどほどに

体重を減らしすぎると、月経異常につながります。
無理なダイエットはやめましょう。ご自分の体型や生活、活動レベルに合った食事の量をキープしましょう。

参考文献

  • 妇科病手册:王阿丽主編(人民卫生出版社)
  • 早わかり薬膳素材:辰巳洋著(源草社)
  • 漢方製剤応用自在のユニット処方解説:秋葉哲生著(ライフ・サイエンス)
  • 産科婦人科用語集・用語解説集 改訂第4版:日本産科婦人科学会編集・監修(日本産科婦人科学会)
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