「月経過少」とは、月経周期は基本的に正常だが、月経期間が8日~14日と延長することをさします。

西洋医学的にも、月経の出血が8日以上続くことを「過長月経」と診断します。
過長月経は、無排卵周期症のようなホルモンバランスの乱れが原因であることが多いですが、子宮筋腫などの子宮の病気が関係していることもあります。
経血の量は多いことも少ないこともありますが、量が多いまま期間が長くなると貧血になることもあります。
出血の量が多いまま止まらない方は、出血中でもかまわないので産婦人科を受診しましょう。原因を調べたり出血を止める治療を行います。
出血の量が少なくても、月経の期間が毎回のように長い場合にも産婦人科を受診しましょう。原因を調べ、対処法を考えることをお勧めします。
経期延長の弁証
中医学では、「 経期延長 」の原因となる病態(証)を以下のように考えます。どの状態が判断して(弁証)、それに合った治療(論治)を行います。
薬膳のレシピも、食べる人の証に合ったものを考えるようにします。
具体的なレシピは、はっぴぃ薬膳のインスタグラムでご紹介しています。
血瘀
月経が8日以上続く。量は少ない、あるいは多い。色は暗紫色、血の塊が出ることもある。
月経時に腹痛がある。お腹に押すと痛む場所(「瘀点」という)がある。
薬膳的おススメ食材
血の滞りを除き、巡らせる食材を摂りましょう。
- チンゲン菜
- くわい
- ビート
- 酢
- ウコン
用いられる方剤・漢方薬
用いられる方剤には、桃紅四物湯があります。
桃紅四物湯については、以前にインスタグラムでピックアップして解説しています。
漢方薬では、以前にご紹介した桂枝茯苓丸のほか、便秘を伴えば桃核承気湯などが処方されます。
陰虚血熱
月経が8日以上続く。量は少なく、色は紅色、ドロッとしている。
口やのどが乾燥する。顔や手足のほてりがある。
薬膳的おススメ食材
陰を潤す食材や熱をとり除く食材を摂りましょう。
- 猪肉
- 牡蠣
- 水菜
- トマト
- いちご
用いられる方剤・漢方薬
用いられる方剤には、両地湯があります。
陰虚血熱によく用いられる漢方薬に、三物黄芩湯があります。「手足のほてり」を訴える方に処方します。経期延長に対しては、他の処方と兼用して用いられることが多いでしょう。
三物黄芩湯については、インスタグラムでピックアップして解説する予定です。
気虚
月経がだらだらと続く。量が多く、色は淡く、サラサラした血が出る。
疲れやすいく、力が入らない。顔の色が白い。
薬膳的おススメ食材
気を補う食材を摂りましょう。
- うるち米
- とり肉
- かつお
- じゃが芋
- 桃
用いられる方剤・漢方薬
用いられる方剤には、挙元煎があります。
漢方薬では、気虚には六君子湯や補中益気湯を処方します。補中益気湯は、内臓の下垂や気分の落ち込みなど、「中気下陥」とよばれる状態に用いられます。
経期延長のためのセルフケア
証に合わせた薬膳とともに、日常生活にも気を配ることでセルフケアを行いましょう。
月経期を健やかに過ごそう
月経期だけでなく、月経が始まる前から、激しい運動や重労働を避けましょう。
ストレス解消やリラックスを目的とした適度な運動は、むしろおススメです。快適な範囲で体を動かしましょう。
気持ちを穏やかに
穏やかな気持ちで過ごしましょう。
うつうつした気分や怒りの感情を抱かないように。
血を滞らせないお食事を
月経期は、カロリー過多を避け、脂っこいものを食べ過ぎないようにしましょう。体を冷やす食べ物の摂り過ぎにも注意しましょう。
これらの食べ物を摂り過ぎると、血が滞ってしまい、血瘀を招きます。
清潔を保とう
子宮内膜炎などの炎症が原因で月経が長引くこともあります。
子宮や腟などに感染を起こさないよう、清潔を保ちましょう。
免疫力を落とさないよう、日ごろからしっかりと睡眠・栄養をとり、身体をよく動かし、よく笑いましょう。
参考文献
- 妇科病手册:王阿丽主編(人民卫生出版社)
- 早わかり薬膳素材:辰巳洋著(源草社)
- 漢方製剤応用自在のユニット処方解説:秋葉哲生著(ライフ・サイエンス)
- 産科婦人科用語集・用語解説集 改訂第4版:日本産科婦人科学会編集・監修(日本産科婦人科学会)