「月経過多」とは、月経周期や月経の期間は正常だが、経血量が以前より明らかに多いことをさします。

西洋医学的にも、経血の量が異常に多いものを「過多月経」と診断します。目安として140ml以上という数値がありますが、実際にはご自身の自覚症状で判断します。
月経によって血液が失われることで、貧血を伴っていることがあります。ただ、過多月経の方の貧血の場合、徐々に進行していくため、貧血の症状に気づかれていない方が多いように感じます。
過多月経の原因として、子宮筋腫や子宮腺筋症などの病気が考えられます。また、内分泌(ホルモン)の病気や血液凝固障害(血が固まりにくい異常)などがあることもあります。月経の量が多くてお困りの方は、産婦人科を受診してその原因を調べてもらいましょう。
産婦人科では、ホルモン剤などを使って月経の量を減らすことができます。月経期はもちろん、毎日が快適で健やかに過ごせるよう、適切な治療を受けましょう。
過多月経の弁証
中医学では、「 過多月経 」の原因となる病態(証)を以下のように考えます。どの状態が判断して(弁証)、それに合った治療(論治)を行います。
薬膳のレシピも、食べる人の証に合ったものを考えるようにします。
具体的なレシピは、はっぴぃ薬膳のインスタグラムでご紹介しています。
気虚
月経の量が多く、色は淡く、サラサラした血が出る。
疲れやすく、軟便。顔色が白い。
薬膳的おススメ食材
気を補う食材を摂りましょう。
- うるち米
- とり肉
- かつお
- じゃが芋
- キャベツ
用いられる方剤・漢方薬
用いられる方剤には、安衝湯があります。
漢方薬では、気虚に対しては「元気がない」「食欲不振」などの症状をもとに、四君子湯などが処方されます。血虚を伴う月経過多の場合には、芎帰膠艾湯を処方します。
血熱
月経の量が多く、色は深紅色、ドロッとしている。
イライラしやすく、口が渇く。尿は黄色、便秘ぎみ。
薬膳的おススメ食材
熱をとり、血を冷やす食材を摂りましょう。
- 小麦
- 豆腐
- カニ
- 白菜
- メロン
用いられる方剤・漢方薬
用いられる方剤には、保陰煎があります。
漢方薬では、「イライラする」「のぼせる」などの症状をもとに、黄連解毒湯などが処方されます。
血瘀
月経の量が多く、色は暗紫色、血の塊が出ることもある。
月経時に腹痛がある。お腹に押すと痛む場所(「瘀点」という)がある。
薬膳的おススメ食材
血の滞りを除き、巡らせる食材を摂りましょう。
- チンゲン菜
- くわい
- ビート
- 酢
- ウコン
用いられる方剤・漢方薬
用いられる方剤には、桃紅四物湯があります。
桃紅四物湯 については、インスタグラムでピックアップして解説する予定です。
漢方薬では、「下腹部の痛み」「静脈のうっ滞」などの症状をもとに、桂枝茯苓丸などが処方されます。
ところで、桂枝茯苓丸を服用すると月経の量が増える方もいらっしゃいます。漢方薬をお飲みの方は、ご自身の体の変化に気づかれたら主治医に必ず伝えてくださいね。
月経過多のためのセルフケア
証に合わせた薬膳とともに、日常生活にも気を配ることでセルフケアを行いましょう。
辛いものを控えめに
辛いものをたくさん摂ると、血を消耗します。辛いものは控えめにしておきましょう。
ビタミンC・鉄分をしっかり摂る
新鮮な野菜や果物をたっぷり食べて、ビタミンCを補いましょう。
鉄分を補い、貧血がある場合には治療しましょう。
気持ちを穏やかに
気分を落ち着かせましょう。喜怒哀楽などの激しい感情を抱かないように。
月経期には働き過ぎない
疲れをためないように、月経期には仕事や予定をセーブしましょう。
体を鍛えよう
体を動かし、可能な範囲で体を鍛えておきましょう。
参考文献
- 妇科病手册:王阿丽主編(人民卫生出版社)
- 早わかり薬膳素材:辰巳洋著(源草社)
- 漢方製剤応用自在のユニット処方解説:秋葉哲生著(ライフ・サイエンス)
- 産科婦人科用語集・用語解説集 改訂第4版:日本産科婦人科学会編集・監修(日本産科婦人科学会)