「月経先期」とは、何回か続けて月経の周期が1~2週早まることをさします。月経の期間や量はおおむね正常です。

西洋医学的には、無排卵周期などによる「頻発月経」が相当します。
頻発月経には、排卵を伴うものも排卵を伴っていないものもあります。月経と思っていた出血が、月経ではなく不正出血である可能性もあります。
月経周期が3週間よりも短い場合には、不正出血の原因となるような病気がないか調べるために、一度産婦人科を受診することをお勧めします。また、妊娠を希望している場合には、排卵しているかどうかも確認しておいた方がよいでしょう。
月経先期の弁証
中医学では、「月経先期」の原因となる病態(証)を以下のように考えます。どの状態が判断して(弁証)、それに合った治療(論治)を行います。
薬膳のレシピも、食べる人の証に合ったものを考えるようにします。
具体的なレシピは、はっぴぃ薬膳のインスタグラムでご紹介しています。
脾気不足
月経周期が短く、経血の量は多め。色が淡く、サラサラした血が出る。
疲れやすく、顔色はよくない。軟便。
薬膳的おススメ食材
気を補い、脾のはたらきを助ける食材を摂りましょう。
- じゃが芋
- しいたけ
- なつめ
- とり肉
- うるち米
用いられる方剤・漢方薬
用いられる方剤には、補中益気湯があります。
漢方薬では、「疲れやすい」「食欲不振」などの症状をもとに、補中益気湯のほか、六君子湯などが処方されます。
腎気虚
月経周期が短く、経血の量は多い時もあれば少ない時もあり。色は黒っぽく、サラサラとした血が出る。
腰や膝に力が入らない。めまいや耳鳴りがある。頻尿。顔色が暗い。
薬膳的おススメ食材
腎気を補う食材を摂りましょう。
- 長芋
- 栗
- うなぎ
- 海老
- 羊肉
用いられる方剤・漢方薬
用いられる方剤には、帰腎丸があります。
帰腎丸については、インスタグラムでピックアップして解説する予定です。
漢方薬では、「疲れやすい」「だるい」などの症状をもとに、八味地黄丸などが処方されます。
陽盛血熱
月経周期が短く、経血の量が多い。色は鮮やかな赤か赤紫で、粘調な血が出る。
顔色が赤い。イライラする。口が渇く。硬便。
薬膳的おススメ食材
熱をとり、血を冷やす食材を摂りましょう。
- 小麦
- 白菜
- セロリ
- トマト
- きゅうり
用いられる方剤・漢方薬
用いられる方剤には、清経散があります。
漢方薬では、「のぼせ」「イライラ」などの症状をもとに、黄連解毒湯などが処方されます。
肝鬱血熱
月経周期が短く、経血の量は多い時も少ない時もある。色は暗赤色で濃い血が出る。
乳房の張り、胸の苦しさ、お腹の張りがある。イライラし起こりやすい。口が苦い。
薬膳的おススメ食材
肝の疏泄を促し、熱をとる食材を摂りましょう。
- 大麦
- カニ
- 蕎麦
- 文旦
- 梅
用いられる方剤・漢方薬
用いられる方剤には、丹梔逍遙散があります。
漢方薬では、「イライラ」「お腹のはり」などの症状をもとに、加味逍遙散( 別名、丹梔逍遙散 )などが処方されます。
陰虚血熱
月経周期が短く、経血の量は少ない時も多い時もある。色は赤く、粘調な血が出る。
頬が赤い。口が渇き、のどが渇く。手足が熱い。
薬膳的おススメ食材
陰を補い、熱をさます食材を摂りましょう。
- 馬肉
- いちご
- 卵
- 牡蠣
- 豆腐
用いられる方剤・漢方薬
用いられる方剤には、両地湯があります。
漢方薬では、「のどが渇く」などの症状をもとに、滋陰降火湯などが処方されます。
月経先期のためのセルフケア
証に合わせた薬膳とともに、日常生活にも気を配ることでセルフケアを行いましょう。
気分を穏やかに
気分を落ち着かせましょう。喜怒哀楽などの感情が強いと、熱を生みます。
食事に気をつける
辛いものや脂っこいものを摂り過ぎると、熱を生み、湿を生じます。脾胃のはたらきを傷め、栄養を取りこむはたらきに影響を与えます。血熱タイプの人は特に注意が必要です。
脾気不足や腎虚の人は、食事をしっかり摂ることも意識しましょう。エネルギーや栄養素が不足すると、月経周期にも影響します。
月経期には休息を
仕事と休息のバランスをとりましょう。特に、月経前は疲れをためないようにしましょう。緊張や激しい運動が過ぎると、脾や腎のはたらきを損ねます。
規則正しい生活を
規則正しい生活を送りましょう。陰血を消耗することがないようにしましょう。
参考文献
- 妇科病手册:王阿丽主編(人民卫生出版社)
- 早わかり薬膳素材:辰巳洋著(源草社)
- 漢方製剤応用自在のユニット処方解説:秋葉哲生著(ライフ・サイエンス)