冬ごもりしていた地中の虫がはい出てくる季節となりました。陽気に誘われて虫が土の中から出てくるように、私たちも外に出て太陽の光を浴びましょう。
「季節の薬膳」コーナーでは、季節に合わせた薬膳を実践するために役立つ情報をお伝えしていきます。「啓蟄」では、春に盛んになる「肝」を意識した食養生をご紹介します。
春は、肝の季節
五行学説は、陰陽学説とともに、中医学の基本理論における重要な柱となっています。
五行学説とは、世界が「木」「火」「土」「金」「水」という5つの要素から成り立っていると考える理論です。
春は、五行のうち「木」に属します。
「木」は、樹木が持つ空に向かって伸びるように、上・外に向かって伸びる、生長する性質をもつものが属します。
「木」に属する五臓は、肝です。春は、肝の機能が盛んになる時期と考えられています。
肝の大切なはたらきとして、「疏泄・条達を主る」というものがあります。
疏泄とは、上昇・発散を意味します。このはたらきによって、全身の気を巡らせます。
気が正常に巡っていれば、消化機能などの各臓器のはたらきも順調になります。また、気持ちも落ち着いてのびやかになります。
肝気の上昇に注意
春は肝気が強くなるので、その度が過ぎてしまうことがあります。
すると、肝気が頭部に向かって上昇し、イライラや怒りっぽさ、頭のふらつきなどの症状が出やすくなります。
肝がつかさどる感情が「怒」であるため、肝の気が強すぎると怒りっぽくなってしまいます。
のぼせやすい人、血圧が高めの人も、肝の気が上りすぎると症状が強く出るかもしれません。
特に、春分を過ぎると陽気の方が陰気に比べて盛んになります。
肝の気がバランスよく巡るように心がけましょう。
春の食養生②:肝のはたらきを整える
肝の気を整えるためには、養血類や滋陰類、清熱類の食材などを用います。
おススメ食材
- 人参、たこ、いか(肝経に入る養血類)
- ぶどう、落花生、ほうれん草(養血類)
- 白菜、セロリ、きゅうり、トマト(清熱類)
夏に近づくにつれて夏野菜を食べるようにすれば、自然と清熱類を摂ることができます。
次の「春分」では、春に摂りたい食材の五気六味についてお伝えします。
参考文献
- 実用中医薬膳学:辰巳洋著(東洋学術出版社)
- 基礎中医学:神戸中医学研究会編著(燎原)
- 早わかり薬膳素材:辰巳洋著(源草社)
- 食薬方剤学:本草薬膳学院
- 四群点数法で簡単カロリー計算!:https://4fgmethod.jp/weight/