薬膳は、適した食材・中薬を使って、健康の維持・増進、病気の予防・治療・回復などを目指します。
薬膳は中医学の理論に基づいているので、中医学の知識が役に立ちます。
ここでは、薬膳・中医学の知識のうち、季節に合わせて食材を選ぶときに必要な考え方のポイントをお伝えします。
3つの基本戦略
生気を補う
食材を組み合わせてさまざまな栄養素をバランスよく摂ることを心がける栄養学に対し、薬膳では、食材の持つ四気・五味などの薬膳における特徴を組み合わせて摂ることで、精気を充実させ体の機能よ高め、健康状態を維持できるようになると考えます。
健康の維持は老化予防にもつながります。
生気を補う基本は、補気・助陽・養血・滋陰など、補養する方法になります。
邪気を取り除く
病気の原因はさまざまですが、それらはすべて邪気によると考えます。
風邪の原因であるウイルスやストレスなど、あらゆる邪気を取り除くことで治療を行います。
陰陽のバランスを整える
季節を考えるにおいて、一番のポイントは陰陽のバランスになります。
季節によって、自然界は変化します。そこには、陰陽の変化があります。
身体の陰陽もこれに従うので、食生活も四季の陰陽に合わせます。
なお、身体を構成する五臓六腑にも陰陽があります。
体質としての陰陽のバランスも整えていきましょう。
各季節に合わせた食材とその性味を簡単にご紹介します。(『実用中医薬膳学』(東洋学術出版社)参照)
春の薬膳
性味:温性(早春)、涼性(晩春)、辛味、甘味、適度な酸味
食材:米、麦、ねぎ、生姜、紫蘇、香菜、薄荷
控えるもの:冷たいもの、酸味、苦味
夏の薬膳
性味:寒性、涼性、鹹味、酸味、適度な苦味
食材:あわ、にがうり、豆腐、セロリ、きゅうり、トマト、なす、蓮根、すいか、パイナップル、緑豆
控えるもの:冷たいもの、熱性のもの、脂っこいもの、辛味、苦味
秋の薬膳
性味:涼性、温性、酸味、甘味、鹹味
食材:あわ、きゅうり、びわ、梨、りんご、ごま、蜂蜜、乳製品、卵、豚肉、貝類
控えるもの:刺激性のもの、熱性のもの、苦味、辛味
冬の薬膳
性味:温性、熱性、辛味、甘味、酸味、適度な鹹味
食材:穀類、芋類、きくらげ、鶏肉、羊肉、エビ
控えるもの:冷たいもの、鹹味、苦味
食材には性味(五気六味)がある
五気
食材が持っている寒・涼・温・熱・平の5つの性質のことです。
寒・涼性のものは体の熱をとり、温・熱性のものは体を温める効果があります。
平性のものはその間にある性質で、陰陽のバランスを調和させます。
寒いときには体を温める食材、暑いときには体の熱をとる食材を活用します。
六味
食材が持っている辛・甘・酸・鹹・淡の6つの味を指しています。
食材そのものが持っている本来の味だけではなく、使用することで現れる効果も含まれているので、本来の味とは異なるものもあります。
それぞれの味の効能は、次のとおりです。
酸味
脱落症状を収める
津液を生じる
多汗、慢性下痢、慢性の咳などが適応です。
苦味
熱を清める
便通をよくする、解毒作用
湿を散らす
発熱、にきび、胃のもたれなどが適応です。
甘味
疲れをとる、虚弱を補う
痛みを和らげる
慢性疲労、疼痛などが適応です。
辛味
体を温める
気血の流れをよくする
痛みを止める
風邪、冷え、疼痛などが適応です。
鹹味
堅いものをやわらげる
通便
便秘などが適応です。
淡味
湿を取り除く
食欲を誘う
むくみ、下痢、お腹のはりなどが適応です。
五季:季節のとらえかた
一年の季節は、春・夏・秋・冬と四季に分かれます。
中医学の五行学説では、長夏を加えて五季に区分します。
ここでは、五季を構成する二十四節気を紹介します。
春
立春から始まって、雨水・啓蟄・春分・清明・穀雨まで。
寒い冬から徐々に温かくなる時期です。
自然界の陰陽のバランスは「陰消陽長」、陰気が弱くなり陽気が次第に強くなる季節です。
夏
立夏から小満・芒種・夏至・小暑・大暑の6節気。
最も暑く、雨も多い時期です。
夏至が「陽盛」の時期にあたります。
長夏
夏の終わりの大暑から、秋の初めの白露までの期間。
黄河流域で雨が最も多い時期にあたります。
日本で言うと、気候的には梅雨の時期と考えるとよいでしょう。
秋
立秋から始まって、処暑・白露・秋分・寒露・霜降までの6節気。
徐々に涼しくなり、乾燥してきます。
「陽消陰長」に入り、冬を超える準備をする時期です。
冬
立冬から小雪・大雪・冬至・小寒・大寒までの期間。
一年中で最も寒い時期です。
「陰陽消長」が緩慢な時期で、体を休ませる時期です。
まとめ
これらの知識をもとに、季節に合わせた食材を選択して摂るようにしましょう。
はっぴぃ薬膳のインスタグラムでは、二十四節気ごとの旬の食材とそのはたらきなどをご紹介してみます。ぜひ、チェックしてみてくださいね。
